録音のお仕事
先日、日曜日の原宿を歩きました。表参道にはとても人が多く、明治神宮参拝客の半分くらいは外国人観光客の方々でした。3年ぶりの光景にコロナ禍から回復してきているのを感じました。
私たちの仕事は主に舞台での演奏とお弟子(生徒)さんのお稽古のほかに「録音」のお仕事があります。
NHKのテレビやラジオの収録か舞台で使う音源の録音です。
まずテレビやラジオの収録
渋谷のNHKのスタジオで収録をします。
現在、Eテレで放送中の「新 にっぽんの芸能」や、それ以前は「芸能花舞台」という番組がありました。 前にくらべて時間も短くなってしまって寂しいかぎりです。
今まで長唄、河東節の素演奏や舞踊の伴奏をさせていただいてきました。
素演奏の場合は、終始カメラがこちらを向いているのでとても緊張します。ふだん唄っている表情など気にしないものですから、変な顔をしていないか、姿勢が悪くないかなど、気になってしまうからです。
歌舞伎や舞踊の舞台は劇場での収録です。こちらも役者さんや舞踊家さんが渾身の心持ちで舞っているので、失敗があってはいけないと、演奏家一同にも緊張感が走ります。
まだ30歳くらいの頃、劇場収録で、自分のわけくち(ソロパート)で高音で声がひっくり返ってしまいとても恥ずかしくて悔しい思いをした経験があります。あの収録が使われたのかはわかりませんが。関係者の皆さんには申し訳ないことをしました。
もう一つの録音のお仕事で舞台で使う音源を録音するというものがあります。
演出上の理由や地方公演で演奏家が全員で行けなかったり、演奏するスペースがなかったり、野外で荒天の場合を想定したりなどの理由で、録音音源を使うのです。
3年前からのコロナ禍で、集団感染をしないための試行錯誤の一つとしても、演奏は録音という公演もありましたし、無観客の公演もありました。
録音の音源は生演奏ではなくなってしまいますが、毎回安定した同じ演奏になる利点もあります。
ハイブリッドもあります。
録音音源に打楽器などの一部の生演奏を加えるのです。
舞台用の録音の仕事のほとんどは新曲です。収録のファーストテイクの5分前に初めて合わせたり、変更なんてこともよくあります。これもまた緊張感の連続です。歌詞を間違えたり、
別の楽器を録っている時にスタジオの隅で譜面を書いていたりすることもあります。
システィーナ歌舞伎や超歌舞伎などが、録音音源での公演です。
将来的には…
歌舞伎もこの先、演奏家が減ってくることも予想されます。
お芝居を支える、黒御簾(くろみす)音楽が、録音の音を使う時代も来るかもしれません。
しかし、黒御簾の三味線は役者さんの動きやセリフの間を見ながら合わせて演奏する、とても熟練のいる技術です。なかなか録音音源で代用することは難しいのではないかと思います。
私も参加している超歌舞伎。今年は4月29日、30日に開催されます。
松永忠次郎
〈忠之助、和之助 ラジオ初出演〉
2023年2月21日11時20分 NHKFM「邦楽のひととき」に二人で出演いたしました! 28日(月)までNHKのHPから聴き逃し配信を1週間お聴きいただけます。
白金台 古典芸能さろんは白金台を中心に長唄・三味線・日本舞踊・河東節のお稽古やご公演依頼を承っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さいませ。
お稽古対象地域:港区・品川区・渋谷区・目黒区他