長唄・三味線どっちを習う?
歌舞伎を観に行くと、初日から千秋楽までの一か月間、昼の部・夜の部とそれぞれ違う演目で、たいてい2つから3つの演目を観ることができます。
大きく分けてお芝居と所作物(しょさもの)に分けられまして、この所作物が三味線音楽で踊る舞踊のことです。
【三味線音楽って何?】
歌舞伎で演奏される主な三味線音楽は義太夫節(ぎだゆうぶし)、常磐津節(ときわづぶし)、清元節(きよもとぶし)、そして長唄で、上演曲目の下に長唄囃子連中、清元連中などと書かれています。その他には河東節(かとうぶし)、荻江節(おぎえぶし)、宮園節(みやぞのぶし)、一中節(いっちゅうぶし)という種類もありますが、河東節の「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」を除いて歌舞伎で上演されることはめったにありません。
三味線音楽を初めて習う方は何をやったらいいかよく分からないと思いますが、舞妓さんになりたくて入ってきた娘さんや、古典芸能の人間国宝になられた偉いお師匠さんも、まず初めは長唄から始めるものです。始めの一歩というわけです。
長唄は歌舞伎の上演も多く、毎月どこかの劇場で聴くことができます。ご贔屓の役者さんが踊っている伴奏の音楽を口ずさめたりしたら、また違った歌舞伎の楽しみ方ができるのではないでしょうか。
【唄と三味線どっちを習う?】
日本の古典芸能の始めの一歩に長唄を選んだら、次は唄と三味線とどちらを習うかです。もちろん、ご自分のやりたいものを選んでいただくのですが、それぞれどんな特徴があるのかを少し解説をいたします。
〈こんな方はぜひ唄を!〉
歌やカラオケが好き、三味線に合わせて唄ってみたいという方はぜひ唄をやってみてください。大きな声や長く息を出すにはお腹を使った呼吸を意識しますので、内臓が上下に動かされて健康にも良いと思います。長唄にはいろいろな唄い方、技法が出てきます。ハイトーンやロングトーン、お能の謡を真似たもの、歌舞伎のセリフ、力強く叫ぶものなどです。少し覚えて大きな声で唄えるようになったら、ストレス発散できること間違いなしです。用意する物は唄本だけです。
〈こんな方はぜひ三味線を!〉
一方三味線をお勧めする方は、とにかく三味線を弾いてみたい、ギターは弾いたことがある、声を出すのは少し恥ずかしいといった方です。必要な道具は、撥(ばち)、ひざゴム、指掛け、手ぬぐいですが、三味線と同様初めのうちはこちらで全てご用意いたします。そのうち自分の三味線を購入すると上達も速くなります。初めに三味線の構え方、撥の持ち方から始まり、撥を糸に当てる、三本の糸を弾き分けたり左手で正確なポジション(勘どころ)を押さえて弾けるようになるまで、数回かかると思います。
お稽古は1回30分。唄も三味線もその人に合わせた進め方をしていますので、数回やって上手くできなくても決して焦ることはありません。また、どちらを習うか選びきれない方は是非両方とも試してみて下さい。
とにかく楽しんでやってみましょう!
長唄は約300年の歴史があり、歌舞伎でよく上演される曲は「勧進帳」「連獅子」「娘道成寺」など約30曲くらいです。その他に長唄演奏会や日本舞踊の会でもよく観られる曲を合わせて約100曲。滅多に聴けない稀曲も入れると300曲くらいは現存しています。江戸時代に生まれ、人々を楽しませ大切に伝承されてきた古典芸能にぜひ触れてみてください。
松永忠次郎
白金台 古典芸能さろんは白金台を中心に長唄・三味線・日本舞踊・河東節のお稽古やご公演依頼を承っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さいませ。
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