江戸浄瑠璃 河東節(えどじょうるり かとうぶし)って 何?
今年も待ちに待った桜の季節がやってまいりました。
長いコロナとの生活や不穏な世界情勢など、落ち着かない不安な日々の中、しばし和めるひとときを楽しみたいものです。
歌舞伎の演目にも桜はなくてはなりません。
桜花が舞台を彩る代表的な演目に
長唄「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」と河東節「助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」があります。
今回は江戸浄瑠璃河東節とその代表曲「助六所縁江戸桜」についてお話しいたします。
400年前、長い戦乱の世が大坂の陣を経て幕を閉じ、天下泰平の世がやってまいりました。
文化の中心地、上方からも芸人たちが江戸へ集まってきました。当時は人形浄瑠璃が隆盛期で、杉山丹後掾(すぎやまたんごのじょう)と薩摩浄雲(さつまじょううん)のニ大トップから次々と派生していきました。
浄雲からはその後長唄に継承される外記節(げきぶし)、大薩摩節(おおざつまぶし)など。
丹後掾より肥前節(ひぜんぶし)、半太夫節(はんだゆうぶし)と続きまして、その半太夫の弟子の江戸太夫河東(えどだゆうかとう)が、それまでの江戸浄瑠璃の要素をもとに、独自の芸風を磨き、1717年、河東節を創設しました。
その後、三味線音楽が歌舞伎舞踊の伴奏に用いられる時代に入り、1761年、それ以前の助六狂言に当時の歌舞伎の登場人物として欠かせない曽我五郎(そがごろう)狂言のストーリー、市川團十郎家の芸風、荒事の味に和事のしなやかさを加え、江戸のヒーローとして作り上げられた作品が、
「助六所縁江戸桜」です。
その助六の登場シーンで語られるのがこの浄瑠璃です。
(浄瑠璃は唄うと言わず、語ると言います)
女性ご贔屓衆が歌舞伎の舞台に
河東節は現存する歌舞伎音楽の中でも独特の存在感を出しています。浄瑠璃の中でも珍しく、細棹三味線を用いて繊細な音にかぶせる三味線方の大きなかけ声と、江戸っ子気質らしいシャキシャキと折り目を際立たせた節回しで、語っているととても気持ちの良いものです。
そして、この「助六所縁江戸桜」の上演の際は十寸見会(ますみかい)連中と呼ばれる成田屋のご贔屓衆(サポーターのような)が演奏いたします。普段プロの男性のみの歌舞伎の舞台に、アマチュアや女性の方も日々お稽古に励み出演します。
そういうシステムが残っているので、河東節は江戸の人々から長く愛され、今に受け継がれてきたのだと思います。
河東節を次世代へ
私と河東節のご縁は、師である山彦節子師の舞台を拝見し、そのカッコいい語り口と、長唄とは違った古風な味わいの旋律に感激し、即座に入門を決めました。
それ以来30年近く勉強してまいりました。
助六を含めて40曲ほど現存し、ほとんどの曲を習うことができたのは、河東節の演奏家が少なくなってしまった今ではとても貴重な財産となりました。これを次世代へ継承していくこともこれからの使命と思います。
今まで多くの生徒さんを助六出演にお手伝いさせていただき、皆さまとても感激され、その後も毎回出演なさっています。そして芸事の極み、御名取にもなることができます。
300年続き、江戸の味わいを残す河東節をぜひ始めてみませんか。
十寸見東裕
白金台 古典芸能さろんは白金台を中心に長唄・三味線・日本舞踊・河東節のお稽古やご公演依頼を承っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さいませ。
お稽古対象地域:港区・品川区・渋谷区・目黒区他