乾燥は声の大敵!〜声のケアについて〜
秋の深まりと共に空気が乾燥してきたことを肌で感じるようになってきました。
今回は空気の乾燥にとても関係している声のケアについてお話しいたします。
長唄には決まった節(メロディ)を唄うために、高い声や大きい声、艶やかな声などの表現豊かな声が求められます。声は喉仏の中にある「声帯」という粘膜組織のカーテンのようなヒダが、肺から送られてきた呼気によって細かく速く振動して発せられた音が、口腔と鼻腔に響いた音です。その音に言葉を乗せ、メロディをなぞって唄となります。
発声する上でその出発点となる声帯が良い状態でないと表現豊かな声になりません。私たちはこの声帯を常に良い状態にしておくことに日々気を配っています。
低い声から高い声をスムーズに出すためには、声帯が良く動くことが大事です。動きを良くするためには、潤いを保つことです。つまり、乾燥は大敵です!
秋冬は特に空気の湿度と声帯周りの筋肉の血行に気を付けます。空気が乾燥してきたこの時期、頻繁に暖かい飲み物を飲んだり飴を舐めたりします。暖かいスチームが出る吸入器も使ったりします。このように起きている時は気になればケアできますが、問題は寝ている時です。
寝ている間に口が開いてしまうと、口の中から声帯までカラカラに乾いて、そのまま水分補給せず、朝起きるまで乾燥した空気に晒されてしまい、声帯にかなりのダメージを負ってしまいます。夏の冷房にも気を付けます。私は一年中、寝る時は口が開かないように専用のテープを貼って寝ています。いろいろなものが市販されていて、最近テレビでも、耳鼻科の先生が勧めていました。
加湿器を使うのが一般的ですが、私はこれはお勧めしません。湿気を保つのは口と鼻の中だけでいいので、部屋全体を過度に加湿してしまうと、寒い外気とで窓や壁は結露でビショビショ。タンスの服や皮製品なども湿り過ぎてしまいカビの発生の原因となり、逆に体調に悪影響を及ぼしてしまいます。キッチンから出る湯気や、干した洗濯物、お風呂の出入り時に漏れる湯気など、普通の生活で出る湿気程度で丁度いいと思います。むしろ私は家の中は乾燥させておきます。冬は外へ出ると途端に乾燥しますので、慣れさせておくのです。もちろんマスクは付けます。(コロナ前から外出時には常に付けてました)
朝起きると、まず暖かいお茶やコーヒーを飲みます。そして首や肩を回しストレッチをします。湯気の湿気と運動で体を温めることで、血行を良くします。声帯に充分血をめぐらせて潤すイメージです。そして小さな声で発生練習に移ります。私は裏声を5〜10分ほど、高い方から低い方へ下すのを繰り返し行います。詳しい発声練習メニューについては、またの機会にしようと思います。
こうして軽く声を出していると声帯が潤ってきて、声を出すのが軽くなってきます。ここで声の出が悪いと、なにかしらの不調だということがわかります。
声に良くないものとして
〈辛い食品〉
トウガラシがたくさん入った料理は、声には絶対良くありません。かといってキムチは体に良い発酵食品ですので適度に食べますが、唄う前には食べません。ニオイも気になりますし‥‥山椒の効いた本格麻婆豆腐も大好きですが、吸い込まないよう気を付けて食べます。
〈冷たいスイーツ〉
アイスクリームは大好きですが、食べるとしたら、もうその日は唄わないというタイミングです。唄う前はせっかくウォームアップした声帯を冷やしてしまうからです。夏でもアイスコーヒーなど、氷の入った冷たいものは避けます。
〈ガヤガヤした店での会話〉
周りがうるさいと、知らずに声が大きくなってしまいますし、しゃべり声は声帯を痛めます。電話も意外に声の大敵です。今はメールやLINEでやり取りできるので便利になりました。今では減りましたが、タバコの煙がモクモクした店も避けます。
〈エアコンでの暖房〉
冬の暖房は何をお使いですか?
ガスファンヒーターやストーブと比べて、エアコンの暖房はとても乾燥しています。ですからエアコンだけの場合、風量を最大にせず、少し厚着をしたり、顔に温風が当たらないところに居たりして注意します。
私はあまり暖房を使わないように、靴下は必ず履き、アウトドア用の厚めの下着の上にフリースを着て、まだ寒い時は小さいペットボトルにお湯を入れてポケットに入れておきます。
〈風邪をひいた時〉
風邪をひいてしまったらできれば声を使わないようにしますが、仕事がある時は無理して出さないようにし、そして仕事仲間や生徒さんにうつさない努力をします。そして、とにかく咳に警戒します。咳は長引きやすく、声帯を痛めます。どうしてもひいてしまうことがありますので、ひいてしまった時は早く治す努力をします。鼻うがいという、塩水を使った鼻腔洗浄を頻繁に行います。そして基本ですが、栄養と睡眠を多くとります。
くしゃみも危険です。私はハウスダストのアレルギーなので、くしゃみが10回ほど止まらなくなって声帯を痛めた経験が何度もあります。電球の取り替えや溜まった書類の整理など、うっかりホコリが立ってしまいそうな時ではマスクをします。
これから冬にかけて声に気を遣う季節となります。良い声のためには常に体調をケアし健康でいることを心がけてこの時期を乗り切ります。栄養を考え、野菜や納豆、乳酸菌食品を多くとったり、健康的な生活を送ることは私たち専門家も趣味でやっている方も、つきつめればいい声を目指しケアすることが健康法の一つとも言えるのではないでしょうか。